コラム

2012/02/22

農業の衰退から学ぶ(群馬・SN)

農業の衰退から学ぶ

▼取材で○○○審議会、△△△委員会といった会議に行くことがある。公共事業再評価委員会などでは、一部白熱した議論が交わされることもあるが、大抵の場合は事務局の原案どおり承認されるので、正直退屈してしまう。いろいろな意見は出るが、議論がまとまらないことを「甲論乙駁(こうろんおつばく)」という。

▼TPP交渉への参加の是非をめぐり関心が高まっている農業問題は、その典型的な例だ。農業関係者の集会で賛成派は「規模を拡大して効率化を図ることで若者が夢をもてる産業になる」、一方「いや違う。農業には環境保全など多面的な機能がある。単に経済的視点で論じるべきではない」といった相反する意見が混在し、決して交わりそうもない。

▼それぞれの立場によって想定する農業の姿が異なることが原因だと言われる。農家は一家の生活をかける専業農家、副業的な兼業農家、老後の生きがいにしている自給的農家などに分かれる。土日の趣味で楽しむ家庭菜園派、都会に疲れ田舎暮らしのスローライフに憧れて始める自然愛好派も少なくない。

▼学問的にもビジネスから農村社会学、環境論など幅広く、食料安全保障の問題もからんでくる。多種多様な側面があるので国の対策は総花的になり、その結果、日本の農業全体が地盤沈下してしまった。

▼ところで建設業界はどうだろうか。震災を機に「安全・安心」を担う業種とし高い評価を受ける一方で、ダークな業種とする国民の根強い評価も払拭できない。このように甲論乙駁(こうろんおつばく)の状態が継続すれば、弱体化に拍車をかけることになってしまう。農業の二の舞は絶対に避けなければならない。(群馬・SN)

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