コラム

2012/03/10

品質軽視は信頼を失う(東京・JI)

品質軽視は信頼を失う

▼「今日の昼飯に何を食べるべきか」。これは、職場に弁当を持参できない人々に共通する大いなる悩みだ。人によっては業務よりも必死に考えていたりもする。いつもの定食屋か、たまにはハンバーガーか、あるいは噂のラーメン屋か。どれも決め手に欠け、結局は近くの牛丼屋に行くという場合もあるだろう。

▼牛丼といえば、吉野家・すき家・松屋の3店である。値下げによる価格競争も日常的に行われている。この値下げ、たった10円20円でも大変な企業努力が伴うようだ。吉野家の安部修仁社長と、友人の経済学者・伊藤元重氏による対談本『吉野家の経済学』では「値段を変えるというのは会社を変えること」とある。

▼値下げをすれば客数が増えるため、店員のマニュアル、設備、工場、配送などあらゆる面に変更が必要となる。バラバラに変えるのは簡単だが、変更点を整合させるのは難しく「机の上で数字をいじくり回せば済むという話じゃない」という。

▼『うまい・安い・早い』を掲げる吉野家も、過去には効率性ばかりの追求で「うまい」を忘れ、客が離れて倒産した経緯がある。費用や時間をかけずに業務を執行できても、品質を軽視すれば信頼を失ってしまう。建設業界では低価格受注が問題となっているが、バランスのとれた『うまい・安い・早い』が必要であろう。

▼安部社長は「現代は受け身に回ると絶望の淵へと向かう。しかしチャンスはそこらじゅうに転がっている。勇気さえあれば耕されていない豊穣な市場が待っている」と述べる。建設業による新分野進出の材料も、実は見落としているものが近くにあるのかもしれない。(東京・JI)

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