コラム

2012/04/10

夜船と北窓を思いながら(茨城・KM)

夜船と北窓を思いながら

▼桜の季節がようやく訪れた。桜にちなんだ食材も多い。ところで春と秋のお彼岸に必ず目にする「おはぎ」。つぶあん、こしあん、嫌いな人は少ないかも。キングカズこと、サッカーの三浦知良選手(横浜FC)も大のおはぎ好きで有名。初エッセイのタイトルを「おはぎ」にしたほどだ。

▼さて、お彼岸におはぎを供えるこの習慣、江戸時代に庶民の間から始まったと言われている。小豆の赤色には災難から身を守る効果があると信じられていて、邪気を払うという信仰が、先祖の供養と結びついたとのこと。昔は小豆の状態に合わせて「あん」を作り分けており、春は年を越した小豆の固い皮を除いて「こしあん」に、秋は新豆のやわらかい皮を活かし「粒あん」にしていた。今では品種改良などにより、どれでも食すことができる。

▼またおはぎは、あんの使い方だけでなく、春と秋で呼び方が違うのは有名だ。小豆の粒をその季節に咲く花に見立て、春、牡丹の季節はぼたもち(牡丹餅)と。秋、萩の季節はおはぎ(お萩)と呼ぶ。しかし実はこのおはぎ、夏と冬の名前もあったと言われている。

▼これは作り方に由来するもので、おはぎはすりこぎで半つぶしにするため、つく音がせず「いつついたのか分からない=つき知らず」を基本に、夏は「つき知らず→着き知らず→夜は船がいつ着いたのか分からない=夜船」。冬は「つき知らず→月知らず→月が見えない=北窓」となったと言う。

▼恥ずかしながら、春と秋、「おはぎ」と「ぼたもち」しか知らなかった。これからは名前にちなんだ情景を思い浮かべながら、いつもと違う季節に食してみようと思う。(茨城・KM)

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