コラム

2012/04/13

記憶よりも記録を残す(茨城k・KK)

記憶よりも記録を残す

▼年度が変わった。大震災直後に始まった昨年度は、多くの人にとって、生涯忘れられない、記憶に残る1年になったに違いない。

▼4月の新年度を期して日記をつけ始めた人も多いだろう。日本人にとって日記というものは、心で感じたこと、秘められた内面の記述に偏りがちだ。紫式部日記や更級日記など優れた日記文学の影響からか、日記といえば、文学的でなければならないという思い込みからきているのかも。

▼「日本人は記憶にばかり頼り、記録することを怠りがち」―日本を代表する知識人で文化勲章授章者の故・梅棹忠夫氏が著書『知的生産の技術』(岩波新書)で述べている。「結果を第一に考えるあまり、プロセスとしての記録を軽んじる」とも。結果オーライは結構だが、記録というものは、後の人にとって社会的な蓄積となる。

▼「長年、日記をつけていても、家庭の問題や、時代の出来事などを、すぐに抜き出せる人がどれほどいるだろうか?」と梅棹氏。分厚い日記帳に細かい字で、心や魂の動きをびっしりと記すよりも、大学ノートなどに、自由なスタイルで、自分のための業務報告という考えに徹し、記録としての日記をつけることを提唱する。

▼2010年8月のチリ・サンホセ鉱山の落盤事故で、地下700mに閉じ込められながら、鉱員らは克明な記録を残した。その記録は危機管理やサバイバルの重要な事例として、今後活かされることだろう。弊紙は、去る3月24日に創刊60周年の特集号を発行したが、この間、多くの記録を残してきた。これは建設業界や行政にとって大変貴重なデータとなると確信している。 (茨城・KK)

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