コラム

2012/04/26

高さは権力と権威の象徴(埼玉・YW)

高さは権力と権威の象徴

▼今年最大の話題はアメリカ大統領選挙であり、ロンドンオリンピックだろうが、国内では来る5月22日に開業する東京スカイツリーであろう。高さ634mはブルジュ・ハリファ(ドバイ)に次ぎ、ウィルス・タワー(シカゴ)などを抜く。

▼高さの競争は、現在はその国の豊かさといった富や勢いの象徴となり、競う傾向がある。そもそも高さへの憧れは、旧約聖書11章に伝説として示された塔である「バベルの塔」が有名。思えば1997年5月、ウィーン美術史美術館の正面をくぐり、目の前に飾られているブリューゲル作「バベルの塔」を見上げ圧倒された。その時に、高望み、誇大な夢や妄想は戒めている作品であると知った。

▼高さや大きさを誇る建造物は、古来、ピラミッドにしろ、万里の長城しかり、欧州の大聖堂、日本の大仏様もそうかもしれないが、時の権力者の力を誇示したり、或いは宗教的な一面で建造されたりした。いずれにしても現代まで現存する高くかつ巨大な建造物は貴重な観光資源であり、世界中の憧れであることにかわりはない。

▼しかし、バベルの塔の最後は、労働者が混乱し中途半端な形で投げ出し、中止になった。神が人間の横暴を怒った―ともされている。だから高望み、妄想を止めるための戒めの作品とも言われる。時代はより高くに憧れ、東京都庁は当時「バブルの塔」と揶揄(やゆ)され、全国の自治体で高層な庁舎を造る計画があり、反対派が選挙で勝つ戒めも起こった。

▼来月22日、権力の象徴ではなく、一般国民の希望と夢をのせたプロジェクトとなる。タワーは遠くから眺めると威圧するのではなく、謙虚な佇まいに見える。(埼玉・YW)

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