コラム

2012/05/03

引退のタイミング(埼玉・SW)

引退のタイミング

▼昨年末、女子プロレスラー・米山香織選手の引退興行を観戦した。米山選手は小柄ながらスピード感あふれるファイトでファンを魅了した。「まだまだやれるのに」という思いが強かったが三十路を過ぎて第2の人生に向けて踏み出そうと決意したのだろう。

▼メーンの試合で米山選手は敗れ、引退セレモニーに移った。観客に向けてあいさつしたあとのこと、10カウントゴングが始まったが、5カウント目ごろに米山選手が「ちょっと待ってくださ〜い」とゴングを止めた。

▼「やめると言ってから、もっとプロレスが好きになって、でも引き返せなくて」と泣き始めた。仲間から「前代未聞だよ」と声をかけられ、結局「辞めたくない」とのことで、米山選手は引退を撤回した。後にも先にもそんなシーンを目の当たりにすることはないだろう。

▼引退撤回には賛否両論あった。「引退をウリにした」「1度引退と掲げて撤回はない」。一方で「辞めたくないなら辞めなくてもいい」「まだ米山選手のファイトが見たい」などの声もあった。個人的には、完全燃焼しておらず悔いが残っているなら辞めない方がよいと思っている。とにもかくにもお騒がせした米山選手は、精神的にひと回り大きくなって現役生活を続けている。

▼引き際は難しい。惜しまれながら辞める人もいれば「何を今さら」という人も少なくない。まだまだやれても後進に道を譲る人がいれば、能力が落ちているのにもかかわらずその立場にしがみつく人もいる。政治の世界でも、2人の閣僚が同様の瀬戸際にいる。情況や立場によって違うだろうが、選択の決断は人となりを垣間見る局面だ。(埼玉・SW)

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