コラム

2012/05/15

足下に広がる未知の世界(茨城・KS)

足下に広がる未知の世界

▼世界最高の自立式電波塔「東京スカイツリー」の完成で賑わうこの頃だが、上空から地下へと転じてみると、アメリカの映画監督、ジェームズ・キャメロン氏が世界最深部の1万1000mに到達している。場所は南太平洋のマリアナ海溝の中でも最深部といわれる「チャレンジャー海淵」。有人潜水艇による到達は1960年以来で、単独では初となる。しかも映画監督というのがすごい。

▼海洋探査の『アビス』、洞窟探検の『サンクタム』、凶悪な異星人との戦闘を描いた『エイリアン2』、神秘的な惑星を舞台にした『アバター』など、氏が手掛ける作品は、宇宙や探検をテーマにしているものが多い。この偉業は、未知の存在への並々ならぬ情熱を持つ氏だからこそ成し遂げられたのだろう。

▼「月のようだった」―。キャメロン氏は最深部の様子をこう語る。光も届かない暗黒と冷静の世界。水圧は1tにも及ぶ。そんな非現実的な世界でも、唯一、エビに似た端脚類が悠然と泳いでいたという。人智を超えた生命体の存在に心は躍るばかりだ。

▼今回の探査は、次回作のアイデア探しはもちろん、海洋生物学、微生物学、宇宙生物学、海洋地質学、地球物理学の研究も兼ねていた。キャメロン氏が持ち帰った映像とわずかな海底の堆積物は、地球外生命体の解明など科学的貢献が期待されている。

▼かたや朝鮮半島の動乱。自称「人工衛星」が発射され、わずか1分で散った。科学技術は人に恐怖を与えるためでなく、文明を向上させ感動をもたらすためにあるはず。新任の指導者には、キャメロン氏を見習ってほしいと思っているのだが。(茨城・KS)

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