コラム

2012/05/16

伝統技術の継承(群馬・KS)

伝統技術の継承

▼群馬県の指定重要文化財「上野総社神社本殿(前橋市)保存修理工事」。文化財の工事現場ほど荘重な瞬間は無いと感じる。この文化財は桃山時代のものと推察され、文化財指定時の調査によれば慶長元年1596年から1614年に建立されたと言われている。

▼過日、総社神社の本殿保存修理工事見学会が開かれ、滅多に見ることができないこけら葺き屋根の補修工事を見学。ほぼ完成に近いこけら葺き屋根を間近で見るのは無論初めてだ。きれいな流線型に感動し、よく見てみれば薄い板が満遍なく敷き詰められている。「はて、どうなっているのか」

▼屋根の材木に用いられていたのは水捌けのよいサワラ。小さく薄く長方形に整えた板を上下左右に重ね、屋根を形成している。何層にもなることが雨水の浸入を防ぎ長持ちさせる―と言うことだった。1枚1枚に竹釘を打ち付け固定していく。聞いただけで気が遠くなる作業だが、作業員はリズムカルに板を打ち付けていく。

▼高度成長期とともに近代的な建築物で街は構成されていった。著しい発展の傍らで伝統建築物がポツンと残る。貴重な建造物を辿れば貴重な人材が存在する。継承者が絶えればいつか建物も朽ちる。日本伝統建築技術保存会は、気候風土と融合調和し発展を続けてきた日本の木造建築を後世に残すため、伝統的木工技術の継承を図る講座の開講など活動を活発に行っている。

▼これから数10年先に再び行われるであろう上野総社神社の保存工事。その現場見学へ赴いたとき、長い年月をかけて育ってきた伝統建築の継承を、再度しっかり目に焼き付けておきたいと思う。(群馬・KS)

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