コラム

2012/06/01

素材を生かすこと(茨城・KM)

素材を活かすこと

▼茨城県日立市営「かみね動物園」の変化が著しい。動物は基本的に変わっていないのだが、見ている側が楽しいのだ。日立市は2008年から、かみね公園の改革に着手。チンパンジー舎の新設、ゾウ舎改修にはじまり、新サル舎「サルの楽園」、新クマ舎などを整備。また改修に伴い展示方法を行動展示に切り替えている。

▼変わったのは施設だけではない。サービスも充実してきた。例えば入園時に、動物に餌をあげる時間が示されている。そもそも、これまで同園で動物が餌を食べている姿を見ることができたのは、こども動物園やサル山ぐらいだった。今ではタイミングさえ合えば象やサイ、ペンギンにまで「自分で」餌をあげることができる。

▼また行動展示に変えたことで、動物たちも生き生きしているようだ。「サルの楽園」では、子どもが持っていたお菓子をリス猿が取ってしまうという、ほほえましいアクシデントがあったほど。動物だけではない。来園者と触れ合う機会が増えたからか、職員の対応も格段に向上していると感じた。

▼日立市と言えば、先日友人の結婚式が同市であり、高校時代の友人と電車で現地に向かった。新日立駅舎が妹島和世氏監修で完成したのが昨年の4月。昔の駅舎しか知らない友人たちは電車を降りて海側に目をやり、驚きの声を上げていた。「こんなに景色がよかったのか」と。

▼そこにある素材の能力を最大限に生かす。このことだけで場の雰囲気はガラリと変わる。素材を活かすことで日立駅舎、かみね公園の雰囲気が変わり始めているのは明白だ。日立の街に活力が戻ってくる日も近いのでは。(茨城・KM)

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