コラム

2012/06/20

田植えと早乙女(群馬・SN)

田植えと早乙女〈さおとめ〉

▼6月も下旬となり筆者が住む北関東のとある街では田植えのシーズンを迎えた。緑の苗がさわやかな風に揺れ、青い空が水面に映える。田植え後の田園風景は実にすがすがしく、昔から続くこの光景に郷愁を感じる。ただ、残念なことに農家の跡継ぎがいないことなどから年々耕作放棄地が目立ってきている。

▼田植を行う若い女性のことを「早乙女」という。田植に際して田の神を祭る特定の女性を指したものと考えられ、かつては田主〈たあるじ〉の家族の若い女性を家早乙女,内早乙女などと呼んでいたらしい。筆者の住む地域でも農家のお孫さんと想われる若い?早乙女さん?が田植えを手伝っている姿を見かける。

▼福島の原子力発電所事故を受け、昨年ソフトバンクの孫正義社長は休耕田などを活用した大規模太陽光発電所の建設構想を宣言。休耕田や耕作放棄地の約2割に太陽光発電パネルを設置すれば、発電能力は原発50基分に相当すると試算。各地の自治体とタイアップして進められている。

▼脱原発を目指す新たな取り組みとして注目が集まるが、一方では自然が相手で気象条件によって供給能力が左右される太陽光発電の非効率性などから、冷ややかな反応が目立つのも事実。電力の安定供給を最優先する立場で原発を重視する経済界からは、孫氏は「非現実的な夢想家」と見られているようだ。

▼個人的には田んぼは田んぼのままで残って欲しい。秋になれば稲穂が垂れ、その周りには赤とんぼが、そして稲刈りが終わると1年が暮れ、冬には雪が積もる。そんな風景をこれ以上失いたくない、何よりも早乙女を見られなくなってしまうことは悲しい。(群馬・SN)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら