コラム

2012/07/05

レバ刺し禁止に思う(東京・HM)

レバ刺し禁止に思う

▼レバ刺しが今月から食べられなくなった。大好物の筆者にとって非常に残念。ショウガと白髪ネギを乗せ、巻くように箸でつまみ、塩入りゴマ油につける。口に入れるとサクッと噛み切れる小気味いい歯ごたえ。この独特の歯ごたえとのどごしが醍醐味。

▼食の安全と食文化。どちらを優先するのかという話だが、今回の禁止にはちょっと抵抗がある。好物だから言っているのではなく、安全を過度に気にするのは、行政による過保護だと思えるし、国民の行政依存を強める結果になりそうだからだ。

▼何かが起これば、まずは行政の責任が問われるのが最近の風潮。「役所は何をやっているんだ」の声は耳にタコで、すべての責任を役所の不手際に押し付けて安心するのはいかがかと思う。100%の安全はこの世にはない。誰でも常にリスクを背負っており、それに対して行政も万能ではない。

▼東日本大震災以降、国土の安全向上は全国民が願うところ。一方、行政サイドの考え方として、これまでのように「安全な国土をつくります」ではなく、安全対策を進めながら、「危険は危険として伝えよう」という意識が芽生えている。自分のリスクを自分で考えるという文化を根付かせたい想いが根底にある。

▼もともとレバ刺し愛好家の中では「安すぎる店は危険」は常識だ。お店が出すものは安全、と盲目的に信じることは自己の危機管理という面では甘すぎる。本当に危険なのはレバーではなく、こうした考え方が常識になり、疑問にも思われない現在の風潮だろう。今回のような対応が続くと、禁止、禁止的流れになってのではないかと危惧している。(東京・HM)

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