コラム

2012/11/01

安田選手の闘う人生劇場(埼玉・HK)

安田選手の闘う人生劇場

▼元プロレスラー、闘う人生劇場こと安田忠夫は、思い出深い存在だ。初めて安田を見たのは小学生のころ、新日本プロレスのテレビ番組「ワールドプロレスリング」だった。当時の新日本プロレスは蝶野正洋率いる悪の軍団nWoが席巻しており、今は亡き橋本真也ら正規軍がそれに対抗する様相だった。安田は正規軍に所属していたが、ほとんどの試合で直線的に突進した挙げ句、敗退してしまうという、かませ犬的な存在で、正規軍を応援する筆者にとっては疎ましくなっていった。

▼それから数年が経過した2001年の大晦日、これまで負け続けてきた安田と、K―1などで輝かしい戦績を残してきたジェロム・レ・バンナの対戦が決まった。互いに不慣れな総合格闘技ルールであっても、一方的な試合となることは誰の目にも明らかだった。

▼しかし、おおかたの予想に反して、試合後に勝ち名乗りを挙げたのは安田だった。これまでのプロレスの試合と同じように、不恰好に突進を繰り返した。最後はバンナを押し倒し、腕で首を圧迫するギロチンチョークと言う技で試合を終えた。

▼家族との離別、ギャンブルによる借金苦と、波乱万丈の人生を歩んできた男が、やっとの思いで輝きを手にした瞬間だった。不恰好でも敗北を恐れずひたすら前に進むことの勇気、苦しみに耐える強さを多くの人は学んだ。

▼その後、自殺未遂の報道や金銭トラブルなど、様々な人生の苦境に立たされた。現在はプロレスラーを引退し、ファンの前に出ることはめったに無い。しかし安田ならば再び輝きを手にすることができると信じずにはいられない。(埼玉・HK)

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