高橋さんからの伝言(埼玉・ＡＯ)

高橋さんからの伝言

▼海賊となった少年が、仲間と共に秘宝探しの旅をする漫画「ONE PIECE」（尾田栄一郎著）。１９９７年に連載を開始し、単行本はこれまで68巻を発刊。累計発行部数２億７０００万部超、単巻の初版発行部数４０５万部など数々の新記録を打ち立て、人気は止まる所を知らない。

▼旅に魅せられる人は多い。「可愛い子には旅をさせよ」の諺もあるように、異郷の地で過ごすことは自身を成長させる手段でもある。ただし、風任せの放浪を戒める「ロバが旅に出たところで、馬になって帰って来るわけではない」の諺も。目的という地図を携え出発することが肝要である。

▼次世代を担う若者に建設業の素晴らしさを伝えようと国土交通省などが公募したメッセージ「私たちの主張」で、本年度最優秀位に輝いた高橋陽子さん（中野土建?、長野県）。受賞作「建築バカ」で、工事が完成するまでの工程を旅に例え、仲間の大切さや目的地にたどり着いた時の喜びを書いた。

▼施工図担当の高橋さん。初仕事で旅仲間に「これでは目的地に向えない」とたしなめられる。幾度見直しても結果は同じ。途方に暮れていたある日、型枠大工の職長が「独りよがりの地図はだめ。型枠に関しては俺たちの方がプロ。分からないことは聞いてこい」。話し合い、協力して旅することを学んだという。

▼「不安や挫折、孤独で一杯になるかもしれません。それでも、完成した時の達成感と喜び、何より地域の人からもらう感謝の言葉と笑顔で、すべては吹き飛んでしまいます」。建設という名の旅の魔力に魅入られた高橋さん。仲間を思いながら、きょうも新たな地図を描いている。（長野・ＥＭ）