コラム

2013/02/07

復興は公共事業か(埼玉・HK)

復興は公共事業か


▼今年も122万人の若者が成人式を迎えた。テレビでは晴れやかな振袖を着た女性の姿が映し出さ

れる。その一方で、東日本大震災で被災し、全村避難となった村に居住していた青年へのインタビ

ューが印象的だ。彼の職業は建設業。土木作業員なのか「自分たちの力で復興する。必ず故郷に戻

る」と、今風の口調ながら力強く語った。


▼被災者ではない者にとって復興とは国の政策であり、公共事業のひとつだ。また、国と、その公共

工事を請け負う業者にとっても同じだったようだ。蓋を開けてみれば、福島第一原発周辺の放射能除

染作業では手抜きが横行し、それを半ば黙認した環境省がいた。除染作業の現場にあの青年がいたら

―そう考えると、被災者でない筆者ですら虚しさを覚える。


▼生きてきた土地を失った被災者は口をそろえて「戻りたいが、復興はできないかもしれない」と言

う。彼らのほとんどは今、想いを持ち続ける以外、復興に携わることすらできないでいる。


▼昨年末、民主党から自民党に政権が移り、安倍晋三自民党総裁は13・1兆円程度の補正予算案を編

成する考えを示した。補正予算案には復興関連費も多く盛り込まれる見込みだ。これで復興が加速す

るかどうかは今後の動きにもよるが、ここに来てようやく新たな一歩を踏み出したという印象だ。


▼震災の発生は誰の責任でもないが、復興は国が主導して進めるものだ。除染作業を無意味とする世

論がある中であっても、出来うる限りのことを今しなければいけないのは自明の理だろう。復興とい

う重責の多くを次代を担う若者たちに任せてしまうのは、あまりにも酷である。(埼玉・HK)


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