コラム

2013/03/30

喜びいっぱいの甲州方言(山梨・TH)

喜びいっぱいの甲州方言


▼筆者は山梨県に生まれ育った。子供の頃から甲州弁を良く使っていた。しかし、成長するにつれ余

り使わなくなった。心のどこかで、方言は恥ずかしいと思うようになった。ところが、地元に帰ると、

緊張の糸がほぐれたかのように甲州弁が胸の中によみがえってくる。


▼学生時代は、田舎者に思われないよう甲州弁をひたすら隠し通した。だが思わぬところに落とし穴

があった。他県出身の友人に、背中がかゆくなったので、「かじってくれ」と頼んだ。だが、不思議

そうに眺めているだけ。理由を尋ねると意味が分からないと答えた。その時「かじる」が方言である

ことに気づいた。標準語では「背中をかく」と言うのだ。


▼甲州弁に興味を持ち、五緒川津平太氏の本『キャン・ユー・スピーク甲州弁?』(樹上の家出版

刊)を読んだ。甲州弁の中でも、核家族化、都市化など環境の変化により世代を超えて伝わりにくく

なっていると指摘。数10年後には、かなりの数の甲州弁が消滅すると予想している。


▼あるテレビ番組で甲州弁が話題になった。不名誉なことに、ブサイク方言のワーストワンに選ばれ

ていた。ただ例として挙げられていた甲州弁は、意味を知っていても余り使う人はいない方言が多い。

使うとしても、かなりの年配の方くらいで、番組では面白可笑しく扱っていた。


▼甲州弁を含め方言は、公の場で使うことは出来ない。少しづつ忘れ去られる。方言の長所は、「言

いたいこと、感情や気持ちが伝わる」「親しみを感じる」など様々ある。土地の歴史、喜びや悲しみ

などがいっぱい詰まった甲州弁。TPOに合せてこれからも使っていきたい。(山梨・TH)


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