2013/04/23
強靭化に加え少子化対策も(茨城・HS)
強靭化に加え少子化対策も
▼吉野杉で名高い奈良県吉野郡川上村。同村を知ったのはダムの完成式典が行われたというニュース。
国交省近畿地方整備局が建設を進めてきた「大滝ダム」が、計画から半世紀を経て完成したのだ。
▼興味を引いたのは総事業費の推移。当初は約230億円だったが、紆余曲折を経て、最終的には約
3640億円にまで膨らんだ。当時と今では物価が違うし、工事費や用地補償費がかさんだのも理解
できる。しかし、50年ほどで16倍近くまで膨らんだその現実には驚かされた。
▼ダム建設の契機は、今でも参考映像として流されることがある1962年に発生した伊勢湾台風だ。
5000人以上にも及ぶ犠牲者を出したこの自然災害は、治水の大切さを再認識させるとともに災害
対策基本法成立の契機にもなった。
▼もう一つ、このニュースで気になった数字がある。それは、川上村の人口減少だ。少子高齢化が進
む昨今、多くの自治体が減っていく人口に頭を悩ませているが、川上村はこの50年で5000人以上
が減少している。15歳未満の人口比率も10%を割り込んでいる。ダム建設で村から出ていった世帯も
あっただろう。
▼将来的に国土強靭化基本法が成立し、減災・防災の施策が次々と進められることになる。それにあ
わせ、政治には少子化対策もリンクして大胆に進めてほしいものである。当たり前なことだが、いく
ら災害に強い国ができたとしても、そこで暮らす人がいなければ意味がない。人材育成は国土の強靭
化よりも難しいかもしれないが、人は城、人は石垣、人は堀といわれるように、人の力があってこそ
国は初めて意味を成すのだから。(茨城・HS)