2013/05/01
理想と現実のはざまで(長野・EM)
理想と現実のはざまで
▼息子が小学校に入学した。小さな体にはまだ不釣合いな、黒々とし重厚なランドセルを背負い家を
出て行く。5人編成の登校班で、彼の位置は陣頭の年長者のすぐ後ろ。しかし、異物の重さに負けぬ
ためか、単に慣れぬ不安のせいか、足もとを一心に見つめて歩くから隊列はすぐ間延びしてしまう。
▼入学前は「あいさつ番長になります」と、積極性を前面に押し出す作戦を立てたようだが、40人ほ
どのクラスメイトの内、同じ幼稚園の級友が2人だけという想定外の事態に怖気づき、思い描いたと
おりの船出とはいかなかったようだ。
▼厚労省がまとめた新規学卒就職者の離職状況によると、平成21年3月に大学を卒業し建設業に入職
した1万5172人の内、3年以内に離職した人数は全体の27・6%にあたる4183人。高卒者は
9436人中4120人と、割合は43・7%に上る。ちなみに全産業で見た割合は、大卒者が28・8
%、高卒者が35・7%。
▼年収の低さ、職場環境の悪さ、建設産業の将来に対する不安。いずれにせよ、思い描いた社会人生
活とはかけ離れた現実があったのだろう。業界の若者離れが深刻化する昨今。「辛抱が足りない」と
簡単に切り捨てるのではなく、理由の一つひとつに耳を傾け、魅力的な産業を創るための糧にする必
要がある。
▼さて、入学式から1週間ほどして息子。友達ができないからと、休学を申し出た。妻はこの申請を
「自分が変らなければ何も変わりません」と一蹴。学校に着いても涙ポロポロ。心配する級友に「こ
れは僕の問題だから」と、返答をしたらしい。息子よ、どこを見ている。目の前に友がいたじゃない
か。(長野・EM)