コラム

2013/05/16

発注行政と産業政策の融合(東京・UT)

発注行政と産業政策の融合


▼「発注行政が入札契約制度を考える中で、産業政策を入れては駄目だ」。数年前、国土交通省関係

者から何度か聞いた言葉である。公共インフラ整備に際し、発注行政からすると第一に重要なのは品

質確保であり、企業の育成に関する産業政策を持ち込むと歪みが生じる―という懸念があった。


▼一例として、近年の調査基準価格見直しの際に用いた論法がわかりやすい。低価格受注競争に苦し

む業界から、低価格の引き上げ要望が挙がった。国交省は応じたが、公式には、建設会社の企業経営

が苦しいから引き上げたという論は用いていない。


▼官積算と工事成績評定点との関連に着目してデータをそろえ、契約内容に適合した履行がなされな

い恐れがあるというロジックを固め、あくまでも「公共工事の品質確保のために」見直したとした。


▼弊社が先月開催した「国土強靭化フォーラム」で脇雅史・自民党国土強靭化総合調査会副会長は、

公共工事を発注する際に考えるべき視点として、適正な価格、品質の確保と建設産業が健全に存在し

得ることを挙げた。地域の安全・安心、災害対応、ひいては国土強靭化のために、建設業が「地域に

必要な規模で存続し得る配慮が必要」とする考え方だ。真っ当な主張である。


▼関東整備局は本年度、総合評価の中で「若手ターゲット方式」を試行する。40歳以下の若手技術者

を現場代理人などで配置する場合に加点評価する仕組みである。当該工事の品質確保と若手技術者と

は、はっきり言って無関係だが、若手育成という産業政策の視点が入っている。新たな視座による発

注行政が、これから本格化する。(東京・UT)


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