2013/06/25
富士登山巡る入山料の賛否(茨城・HS)
富士登山巡る入山料の賛否
▼「富士山が世界遺産に登録されないのはごみ問題のせい」。学生のころ、教師から聞かされた話。
それから何年が過ぎたろう。先日、カンボジアのプノンペンでユネスコの世界遺産委員会が開かれ、
富士山の世界文化遺産への登録が承認された。4月の時点で登録が確実視されていたものの、実際に
決定されるとまた趣が違うものだ。
▼登録名称は「富士山と信仰・芸術の関連遺産群」。自然遺産の評価基準には適合しなかったため、
信仰や芸術作品を生み出した山として登録されたもの。代表的なものとして、美術では葛飾北斎の
『冨嶽三十六景』、文学では太宰治の『富嶽百景』などがあるだろう。
▼昨年の富士登山者は32万人。世界遺産への登録が決まったことで、この数字は今後さらに増加する
ことが予想される。そこで山梨と静岡の両県は、入山料導入の検討を始めた。山頂を目指す登山者に
対し、ことしの夏から試験的に寄付金1000円を集めるというもので、期間は7月下旬から10日程
度になるようだ。
▼山に登るだけでどうしてお金が必要なのか。こんなに安く、しかも寄付では意味がない。入山料を
巡っては、人によっていろいろな意見が出るに違いない。登山をしない人間の偏見だと、もっと高く
てもよさそうな気もする。
▼入山料は来年から本格導入されるため、今後も議論が続くはず。その使途は安全対策や環境保全と
され、今回の寄付金には領収書と記念バッジが渡されるという。領収書はともかく、富士登山者にい
まさら記念バッジを渡されてどうするというのだろう。今は、霊峰富士の美観が損なわれないことを
祈るだけである。(茨城・HS)