2013/07/03
現代フランスが映す問題(群馬・MY)
現代フランスが映す問題
▼渡仏する友人を見送るささやかな集まりがあった。これから数カ月をパリで過ごし語学を磨いて、
帰国後今秋実施される仏語検定の1級を受験するそうだ。参加者はパリの乾いた夏をしきりにうらや
んだが、友人からは1年に1回しかないチャンスにかける並々ならぬ意気込みが感じられた。
▼その友人によると、最初に渡仏した15年前と比べて格段に移民系住民が増えているそうだ。旧植民
地のアフリカ諸国からはもちろん、東欧・中東系も増加。その2世や3世も生まれ、サッカーのフラ
ンス代表を見るとその多様さはわかりやすい。
▼2008年にカンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受章した『パリ20区、僕たちのクラス』
(ローラン・カンテ監督)は、出身国もバラバラな生徒が集まる中学校の学級を描く。スラングばか
り話し複雑な家庭環境を抱える移民系生徒と向き合う国語教師の姿を通じ、現代フランス社会の複雑
さを映している。
▼日本ではフィリピンやベトナムから看護師を受け入れる事業が開始されたが、国家資格の試験とと
もに日本語の難しさが合格率の上昇を阻んでいる。看護や福祉の現場では専門用語の習得は必須だろ
うから、乗り越えなければならない壁だ。われわれも隣人として受け入れる心構えが求められるだろ
う。
▼フランス大使館のウェブサイトには「不法入国を根源から阻止するために断固とした行動が必要で
ある一方、フランスはわれわれが仕事や学びに来て欲しいと願う人びとにとって魅力的であり続けな
ければならない」とある。日本に魅せられた現代の『渡来人』もきっと新たな力をもたらすに違いな
い。(群馬・MY)