2013/08/14
「ピンはね」連想から決別(東京・UT)
「ピンはね」連想から決別
▼手元の辞書で「ピンはね」と引くと、「取り次いで人に渡すべき金品から、その一部を取って自分
のものとすること」とある。インターネット上の百科事典ともいわれるウィキぺディアには、「ピン
はね」が広く行われてきた業界として人材派遣、芸能などと並び、建設業も記されている。
▼進行形の建設産業政策のうち、最重要に挙げられるのが保険未加入対策。3月下旬から業界の話題
の中心となっている設計労務単価の大幅な引き上げも、保険加入の原資となる法定福利費の相当額を
反映させたという面で、大きな関連性がある。
▼保険未加入対策における最大の山場が、まもなく到来する。法定福利費を内訳明示した書式の標準
見積書を9月下旬から業界で一斉に活用開始するというものだ。法定福利費は、発注者が負担する工
事価格に含まれるべき経費。ここに立ち返り、本来であれば当然の世界観を共有する。
▼こうした取り組みを業界を挙げてスタートさせるというのは、空前絶後だろう。技能労働者にあま
ねく行き渡り、建設業界のイメージアップに向けてうまく機能していけば、「痛快」という表現すら
当てはまる。一方で懸念もある。心ない元請から「他社は言ってきてないぞ」「発注者からもらって
いない」と言われる局面も予想される。また「法定福利費は確保、その代わりにほかを引き下げられ
る」といったケースも考えられる。
▼この取り組みは、下請が儲けるような類のものでもない。元請も下請も法律上必要な費用を「流す
だけ」という認識が肝要となる。「ピンはね」という言葉から建設業を連想しなくなるよう、みんな
で取り組みたい。(東京・UT)