コラム

2013/08/22

経験以前に想像しよう(東京・JI)

経験以前に想像しよう


▼静岡県の海水浴場で砂浜からのんびりと海を眺めていると、浅瀬で遊んでいた小学生の息子が「ク

ラゲだ。クラゲだ」とビーチ全体に向けて何度も叫んでいる。あわてて駆け寄ると、大人の頭くらい

の青黒い不気味なクラゲがゆらゆらと波に揺れていた。


▼息子は安全確保のため、周囲の人々と監視員に向けて叫んでいたらしい。やがて監視員がクラゲ捕

獲のために走ってきたのだが、持っている網が小さすぎる。これでは子供の頭すら入らない。予想を

超える大きさに、彼は驚いていた。


▼「想定外」という言葉が広まった東日本大震災。あの時、津波が来ることは多くの人が警報で知っ

ていた。しかし、その規模は想像を超えるものだった。人は自らが経験していないことは想像しにく

い。結果として、大きな被害が出てしまった。


▼来年度の予算案について、公共事業費など裁量的経費の削減という声が聞こえる。では国土強靭化

はどうなるのか。始まってもいないのに、もう終わるのだろうか。公共事業費削減がもたらす影響は、

人々の想像を必ず超える。次の大災害時に、我々は再び同じような悲劇を繰り返すのか。


▼クラゲに立ち向かう監視員は、もう一方の手にバケツを持っていた。小さな網で大きなクラゲをた

ぐり寄せ、無事にバケツに収めた。聞けば、そのビーチでクラゲが出たのは初めてとのこと。水槽に

入れられ、簡易式ではあるものの監視員室の前に展示された。今回の経験を踏まえ、ビーチでは次の

機会に向けて大きな網を用意するだろう。しかし、その大きな網を超える生物が来るかもしれない。

相手がクラゲとは限らないのである。(東京・JI)


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