コラム

2013/09/06

心地の良い距離感(群馬・SS)

心地の良い距離感


▼懇意にしている隣家から先日、ナスとキュウリを頂戴した。「小さいプランター菜園だから」と謙

遜するが、毎度いただく野菜はいつもみずみずしく美味しい。心から感謝している。


▼また、現在は東京に在住する同級生と近況報告を交わす機会があった。隣家から野菜をもらったこ

とを話すと驚いていた。アパートで一人暮らしをする彼は近所付き合いをまったくしていないどころ

か、隣がどういう住民なのかも知らないという。「実家にいた時はそういう交流もあったんだけどな

あ」。都会での孤独感をにじませる彼の姿が、今も脳裏から離れない。


▼一方で狭すぎるコミュニティであるがゆえに起きてしまった凄惨な事件もある。山口県周南市の連

続放火殺人事件のニュースは、にわかに信じがたい出来事だ。容疑者がうまく地域に溶け込めなかっ

た末の悲劇と伝えられているが、人と人の距離感を考えさせられた。


▼学生時代の心理学の講義で習った「パーソナルスペース」のことが頭によぎった。他人に近づかれ

ると不快に感じる空間を指す。たとえば電車内ではできるだけ人と接しないスペースに座ろうとする

し、トイレでは無意識のうちに1基分を空けて用を足す。このスペースはその人との親密度によって

範囲が変わる。見知らぬ人に近づかれるのは、ひどく不快なものだ。


▼隣家からいただいたナスはカレーの具になり、キュウリは丸のまま家族全員で平らげた。後日、お

礼を言いに行った際には「またできたらあげるからね」と満面の笑みで肩をぽんと叩かれた。昨今、

心の通う交流は希薄になったと言われるが、我が家の環境は良好である。(群馬・SS)


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