コラム

2014/02/21

威風堂々の白塗りカッパ(長野・JI)

威風堂々の白塗りカッパ


▼小学校の授業参観に遅れて到着すると、全学年の児童が校庭で整列していた。そこへ登場したのは、

頭頂部を剃り上げたカッパのようなヘアスタイルで全身白塗りの半裸状態の男。先端に布を巻いた棒

を持ち、そこに火をつける。さらに口にたっぷりと含んだ酒を火に向けて勢いよく吹きかけ、豪快に

炎を上げていた


▼彼は教師の知人の大道芸人で、道徳授業の一環として「火吹き」を行っていたらしい。父母との懇

談会では、裸足のままで教室の床に足を踏ん張り、背筋を張って大きな声で「芸ではなく生き方を見

せている」と話していた。白塗りカッパではあるが、まさに威風堂々とした姿が印象的だった


▼建設業界では「誇りを持てる産業にしたい」という言葉が官民から聞こえてくる。大事な考えであ

る。しかし本当に建設業界は誇りを失った人々で形成されているのだろうか。『誇りを失った産業』

という言葉が決まり文句となって一人歩きしていないだろうか


▼そうはいっても建設業就業者数は今後さらに減る見込みらしい。たとえ日本全体で公共事業が増え

ようとも、人がいなければ工事は進まない。新規に入職する若者をいかに獲得し、さらには現在の働

き手をいかに確保するか。イメージと現実の両方を変えていく必要があるだろう


▼人々が持つべき誇りの源は、職業でもなく収入でもなく容姿でもなく、過去から現在に至る自身の

歩みそのものかもしれない。「こういう大人がいることを子供たちに知ってほしい」。半生を語る白

塗りカッパは現在45歳。その目は常にまっすぐで、見栄も照れもない。彼は全国を旅して人々を楽し

ませている。(長野・JI)


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