コラム

2014/03/29

大統領の執事が教えたこと(山梨・TT)

大統領の執事が教えたこと


▼人間ドラマを得意とするリー・ダニエルズ監督の最新作映画『大統領の執事の涙』を観た。ホワイ

トハウスで戦後34年間、アイゼンハワーからレーガンまで7代にわたる大統領の執事として仕えたア

フリカ系アメリカ人、ユージン・アレンをモデルにした物語だ


▼名優フォレスト・ウィテカーが演ずる主人公セシルは、綿花畑で働く奴隷の子供として育つ。真摯

な仕事ぶりでホテルボーイから国家の中枢であるホワイトハウスの執事に抜擢。執事に求められるも

のは、自己主張せず、その場の空気として存在し、大統領に何かを問われれば望まれる言葉を返すこ

と。仕事を通して精いっぱいの黒人差別と闘うことが彼の生きがいだった


▼ホイットニーヒューストンやダイアナロスなど黒人女性シンガーの歌を聴いて過ごした青春時代。

家に帰ればバスケット好きの弟が、TVを通してマイケルジョーダン選手の人間離れした競技に釘付

け。黒人の活躍を素直に賞賛し尊敬する生活環境で育った筆者としては、黒人差別や奴隷制度問題は

理解に苦しむところ


▼誰もが知っている歴代大統領に仕え、誰も全く知らない黒人執事が目の当たりにしたのは、米国の

歴史が動く瞬間だった。米ソ核戦争の一触即発を避けたキューバ危機、ケネディ大統領暗殺事件、沖

縄基地からベトナム戦争に向かう戦闘機。他方、選挙権や被選挙権を求め人種差別と闘う黒人執事の

葛藤も描いた。映画は表と裏の米国現代史をあぶりだした作品でもある


▼7人の大統領にも1人の執事にも、プロとして仕事に打ち込む姿の根底にあったのは、強い信念だっ

た。これが米国の強さなのか。(山梨・TT)


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