2014/07/11
ハコモノロングブラウス(長野・JI)
ハコモノロングブラウス
▼駅近くのコンビニ前で、タバコを吸っていた。少し遠くから、白いロングブラウスを風になびかせ
て、さっそうと歩く50代くらいの女性が登場。派手な存在だ。その目の前にバスが到着し、乗客が降
りてきた。そして奇跡が起きる。まったく同じロングブラウスの70代くらいの女性がバスから降り立っ
た
▼すれ違う二人は対照的。50代は服が同じであることに気付き、驚いて口を大きく開ける。70代は無
表情のまま背筋を伸ばして去っていく。50代は少し歩いて振り返り、去りゆく70代を目で追う。しば
らくして、ようやく自分の道を急いでいた
▼振り返った彼女の表情は忘れられない。「年齢が上の女性と同じ服を着ている私のファッションセ
ンスは古いのだろうか」「あの人は振り向かないけれど、気付かなかったのか、それとも気にしない
のか」そういった動揺や焦燥が見られた。彼女は、もう白のロングブラウスを着ることはないだろう。
購入した時、着用した時の高揚感は彼女だけが得た快感であったが、本日をもってすべて終了した
▼先日、財政が厳しく解体できない古い公共施設を紹介するテレビ番組に遭遇した。『無駄なハコモ
ノ』と画面右上で示されている。久しぶりに聞く言葉である。震災や復興を機に、テレビもインフラ
の重要性は理解したのだろう。原点に帰ってハコモノ攻めである
▼格好良いから買った服。必要だから作った公共施設。それが、何らかの理由で不要になることは必
然である。服や施設だけの話ではない。時は流れ、街は変貌し、新たな文化が生まれる。我々にとっ
ては、旧態依然の考え方こそ最も無駄といえるだろう。(長野JI)。