コラム

2014/08/07

この梅雨の出来事(茨城・EM)

この梅雨の出来事


▼彼とは高校からの付き合いだから、もう20年以上経つ。学生時代は四六時中連れ立ち、一緒に色ん

なことを学んだ。ぶっきらぼうで協調性もなく、周りからは冷ややかな目で見られがちだったけれど、

僕はとても馬が合った。当時の思い出の大概には彼が写りこんでいる


▼卒業後はともに地元を離れ、疎遠がちになったが、それでも年に幾度かは顔を合わせた。僕の結婚

式には彼が、彼の結婚式では僕がスピーチを読み、晴れの席には似つかわしくない昔話を披露し合っ


▼特に申し合わせたわけではないのに、彼と会う時はたいてい2人だった。彼の奥さんとは結婚式で

初めて会ってそれきりだったし、8才と4才になる2人の娘とは一度も会ったことがなかった。今思

えば、どうして家族ぐるみで付き合いをしなかったのか、後悔が募る


▼梅雨の最中、彼の奥さんが、長い闘病生活の末に旅立ったと聞かされた。ガンを患っていたのだと、

その時初めて知った。「3年近く入院と退院を繰り返していたから心の準備はできていたんだ。それ

でもやっぱりきついわ」。傍らでは、彼に会う前に見返した結婚式の写真の花嫁によく似た下の娘が

じゃれついていた


▼厚生労働省のまとめによると、ことし1月から5月までに発生した建設業における死亡災害は13

1件。前年同期に比べ33・7%(33件)も増加している。無機質な数字の裏側には、一人ひとりドラ

マチックな人生があり、これからも、ともに分かち合っていく人達がいたはず。言葉にすると陳腐だ

が、命の尊さを今一度見つめ直し、安全対策にほころびがないか再確認してほしい。(茨城・EM)

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