コラム

2014/10/25

里山衰退に見る時代の流れ(山梨・HK)

里山衰退に見る時代の流れ


▼黄金色に染まり、そよぐ風に波打つ稲穂が刈り取られる収穫の秋を迎えた。住まいの周辺に広がる田んぼも高校生野球部員の坊主頭の如くこざっぱりし、かつて見られた稲架(はさ)に掛けられた稲の姿を見ることは少なくなった


▼太陽の恵みを得た米の味はやはり一味も二味も違うようで、農家では自宅で食する分だけは天日干しにする話も耳にする。所要で出かけた山間の農村地域で、あたり一面稲架掛けされた稲が整然と並ぶ風景を見かけ、里山に想いを馳せた


▼里山の変ぼうは、人間社会と野生動物とのかかわりにも影を落としている。その昔、熊との遭遇や目撃情報のニュースは山菜取りやキノコ狩りであったり、人間の側から彼らの生息圏に足を踏み入れた結果が常であった。それが今や猿やイノシシはわが物顔で住宅街を走り回り、カラスは繁華街の生ごみを狙う世の中になった


▼山麓に豊富であった餌の減少も野生動物の都会化が大きな要因であろうが、人間の生活圏と野生動物の生息圏の境を成していた里山の衰退も見逃すことはできない。手入れをする者がいなくなり、荒れ放題となった山林は、もはや境界線の役割を果たせなくなっている


▼業界では、公共事業量の削減による他分野進出が叫ばれ、地方では林業へ手を広げた企業も少なからずある。時代の流れとともに社会の仕組みも様変わりしている。人は持ち合わせている知恵と努力で、その流れのなかを渡っていかねばならない。街角でカラフルな網をかぶせられたゴミの周囲に鎮座するカラス。童謡に歌われた「山の古巣」(カラス)は本当に古い言葉になってしまったようだ。(山梨・HK)


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