コラム

2014/11/14

都会にない「何か」(東京・HM)

都会にない 「何か」


▼住みやすそうなまちだ、というのが佐賀駅に着いたときの第一印象だ。県庁所在地の駅前だが、それほど高い建物もなく、こじんまりとして、なんとなく懐かしいような、ゆったりとした安心感を覚える


▼吉野ヶ里遺跡に向かう2両編成の列車の窓には、田園風景が広がる。弥生時代には5000人以上が住んでいたと考えられている大集落だ。それだけの人をまかなうための、食糧や燃料などの生産力があった。復元されている3層におよぶ祭殿や高くそびえる物見やぐらを見上げていると、かつての生活の豊かさが目に浮かぶ。「佐賀は大きな地震もなく。海もあり、農業にも向いている」といった地元の人の言葉を思い出す


▼何年か前、佐賀県出身の芸人が佐賀の田舎ぶりを皮肉った歌が流行になった。確かに田舎ではある。しかし、ここには都会にない「何か」がある。それを一言でいい表すことは難しい。視点の高さまで広がる空に、あるいは田んぼの真ん中に立った時に感じる風や水音の中に、歩くと飛び立つバッタの群れの中に見出すことができる


▼都会が「上」で、地方部は「下」という誤った価値観は、しかし日本人の多くが持っている。自らが住む土地を恥じ、都会にあこがれる気持ちの根源、人口流出の根っこがここにある


▼今、地方創生が叫ばれているが、これを現実のものにするには、まずこの価値観の打破が必要だ。そのためには、佐賀の風景の中で見出した、都市にない「何か」をそれぞれの地域で見付け、育てていくことだ。それが地域の誇りになり、魅力になり、活力になり、いずれ地方創生の道へつながっていく。(東京・HM)


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