コラム

2014/12/17

旅行中の母待つ孤独な老猫(群馬・KS)

旅行中の母待つ孤独な老猫(ろうびょう)


▼わが家は、かわいい老猫2匹と一緒に暮らしている。帰宅すると丸く青い瞳を輝かせ、顔を少しだけ傾げて「にゃおん(おかえり)」とかわいらしく出迎えてくれる。「ただいま」と猫を追って中へ入ると、台所、洗面所、お勝手口の順で移動させられる。「飯、新鮮な水、外出願い」のおねだりである。いつも通りのやり取りだが、何とも言いようのない、かわいさがある


▼先日、掃除中に何やら白い破片を見つけた。拾い上げると、どうやら牙である。なぜか2匹そろって2本ずつ牙が抜けてしまい、間抜けな口元になってしまった。かみ砕けないのか、餌の減りも悪く、ついにシニア猫用のキャットフードに変更した。猫のシニア入りだった


▼2匹には、一足先に定年退職というシニアの門出に立った私の母親というお気に入りがいるのだが、ここ数週間ほど定年祝いの長期旅行に父親とともに出掛けている。猫にとっては想定外の悲劇に見舞われたのである


▼老猫の1匹は特に母を慕っているため、姿が見えなくなってからの数日間は、見るからに意気消沈の様子だった。頭を垂らし、寂しさと悲しさにうちひしがれているようで、その姿はあまりにもふびんだった。母の割烹着を置いてみると、そこに身を沈め、ずっとうずくまっていた。いつものおねだりにも勢いが無く、普段の姿を知っているだけに、あまりの消沈ぶりに爆笑してしまった


▼2週間ばかり過ぎると、猫も状況を受け入れ始め、最近では寝床探しに力を入れている。そんな悲劇ももうすぐ終わり。「もういくつ寝るとお正月」の歌のように、もう少しすれば、母の布団で快眠できるだろう。(群馬・KS)


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