コラム

2015/01/07

遊び心でない感動体験を(茨城・HN)

遊び心でない感動体験を


▼子どもがいろいろな仕事や、社会生活を体験できる子ども向け職業体験型テーマパーク「キッザニア」が人気だ。1999年から世界中に広がった。日本にも東京と兵庫の2カ所で施設を展開している。その一つに建設現場体験がある。こどもらが責任をもって仕事を分担し、タワーや橋などの建築物を組み立て、完成させる


▼「建設現場は安全第一でチームワークが大切です。最後のライトアップの瞬間はとても感動しますよ」とスタッフが説明する。体験した子どもたちは「クレーンのロープをつけるのが楽しかった」「完成したスカイツリーに電気がついたとき、すごいと思った」とめいめい感想を述べた。が、なにか強い違和感を感じた


▼あるとき建設現場で働く地元企業の女性技術者を取材した。どんよりと冷え込む冬空のなかで、スコップ片手に黙々と作業を続ける。たずねれば、年齢は38歳。同い年で、あっけらかんと話す素振りに親近感を覚えたが、入社動機に身が引き締まった


▼育て親である技術者の祖父の影響を強く受け、祖父の意思を受け継ぎたいと思って就いた職業である。その祖父が高校一年生の春に他界、祖母も十年ほど前に帰らぬ人に。「恩返しできているかは分かれませんが、そばで見てくれていると信じていれば頑張れます」と彼女は言い切った


▼若者の入職のきっかけは十人十色だ。子どものころから身を削って育ててくれた祖父の仕事の重みを、テーマパークで模擬経験した15歳以下の子どもたちと比較するのは酷だが、子どもたちに、もっとリアリティな、薄っぺらでない感動を、大人になる前に体験していただきたい。(茨城・HN)


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