コラム

2015/01/10

400年続く雪村うちわ(水戸・SA)

400年続く雪村うちわ


▼茨城県内で手作りのうちわを作る工房があることを知り訪ねた。常陸太田市内で代々400年続く「雪村うちわ」。うちわに描かれる絵は、水墨画風による古き良き水戸八景の風情(ふぜい)や、野菜などの生活感ある抽象画のほか、中国に伝わる有難い神様の絵柄などが映え、美しい工芸品であった


▼うちわを作る圷総子(あくつ・ふさこ)さんはことしで93歳になる。幼少からうちわ作りをする祖父や父親の姿を見て、手伝いをしながら製作を学んだそうだ。柄に使う竹は常陸太田市内の山に自ら出向いて集め、紙は山形県産の手すき和紙を使用する。竹は8カ月以上も寝かせて水気を飛ばす。完成までには33もの長い工程があり、年間700本以上製作するという。湿気が少なくなり乾燥するこれからの時期が繁忙期だと話す。うちわの表面を飾る絵は、約30年ほど前に他界されたご主人の作品。今は原画の複写となってしまったが、うちわ作りが続く限り、ご主人の作品が新しきものとして生きていく


▼うちわは海外の方々のお土産としての購入も多く、アメリカやフランスの方々にも圷さんの作品が愛用されているそうだ。うちわの値段は大が2200円、小が2000円と少々高く感じるが、長い工程かけて完成する過程を考えると安価か


▼茨城県県土工芸品に指定されるうちわ作りだが、後継者には息子さんを指名し継承する予定。息子さんの定年まであと3~4年あるが、それまで頑張りたいと気丈に話す


▼真っ直ぐに打ち込める仕事があることはとても素晴らしい。これからもうちわを使う人の喜ぶ姿を胸に製作を続けたいと語る姿勢に職人としての魂を強く感じた。(水戸・SA)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら