コラム

2015/01/29

どんどやき(茨城・EM)

どんどやき


▼【どんど焼き】家庭から集めた正月飾りや縁起物を、やぐらに掛け積み燃やす小正月の行事。その火で焼いた餅や団子を食べると、一年間健康に過ごせるとの言い伝えもある。「どんどん焼き」「さぎちょう」など呼び名は地域により異なるが、日本全国に広く見られる習俗である


▼わが町のどんど焼き。ことしは1月10日に行われた。小学生の2人の子は、朝から近所へ門松やしめ飾りを集めに回り、家に戻ると、長めの柳の枝に白、桃、黄緑3色の団子をくくり付け、夜の本番に備える。団子と共に焼くはずのマシュマロは、すでにいくつも平らげている


▼午後7時。大小のだるまがぐるり周りを囲んだ2つのやぐらに火がくべられる。炎は瞬く間に駆け上がり、焼かれた竹は大きな音を立て破裂する。漆黒の空に橙色の無数の火の粉が踊り、凍てつく空気を一変に溶かす。暗く寒いはず場所が、まばゆく熱い。地域によっては明るいうちに行うところもあるようだが、この地に限っては、この異様さが風習の続く理由であろうと一人合点する


▼娘は怖がり、遠巻きから書初めを放る。とても火柱までは届かない。嫌がる手を引き、燃えさかるやぐらのそばまで連れてゆく。降りそそぐ火の粉を浴びながら投げた「初日の出」は、熱風と共に高く高く、周りが感嘆の声を漏らすほどに舞い上がった


▼やぐらの背が低くなるころ、皆持ち寄った団子や餅をくべ始める。スルメを焼く者もいる。息子と級友は、夜出会った非日常に興奮し駆け回っている。お神酒やみかんが振舞われ、消防団員は寄り合い愚痴をこぼしている。娘の上着には大きな穴が3つ開いた。それでも達筆になればいい。(茨城・EM)


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