コラム

2015/03/21

建設業がつくりだすもの(東京・HM)

建設業がつくりだすもの


▼北陸新幹線の金沢・長野間が14日に開通した。当日の金沢駅はものすごい人出だった。駅前の広場では、伝統芸能の実演が行われ、駅構内では和装の女性たちが出迎える。電車好きの見学人、新幹線に乗る人、降りる人、何しろ人、人、人である


▼その歓迎ムード一色の影で、ひっそりと姿を消した路線がある。長く首都圏と金沢をむすぶ役割を担ってきた特急「はくたか」だ。新幹線開通の前日、この日で廃止になる特急はくたかで金沢へ向かった。上越新幹線で越後湯沢駅まで、そこで乗換えて2時間半。午後1時に東京駅を出て、金沢着は午後5時。疲れた。時短できる新幹線に乗りたい気持ちがよく分かる


▼同じ13日、上野駅でも1つ路線が大役を終えた。定期運行を続けていた最後のブルートレイン、北斗星だ。老朽化に加え、北海道新幹線の開通が来年に迫っているためだ。この日も多くの鉄道ファンがホームを埋めた


▼新しいインフラができれば、古いインフラは役目を終える。当たり前のことだが、やはり感情が伴うのが人間だ。新幹線に喜びながら、はくたかやブルートレインの引退を悲しむ


▼「地図に残る仕事」は大成建設がCMで使ったキャッチコピーだが、建設業の魅力をストレートに表した秀逸なキャッチで、広くよく使われる。ただ建設業がつくっているものは「もの」だけではない。特急はくたかの最終日、車内販売の売り子さんが涙を浮かべながら列車を降りる姿が、やるせなかった。北陸新幹線は金沢の先まで延びる。中央リニア新幹線も事業に着手した。建設業がつくりだすインフラは、今後も多くの人の歓声と涙を生むのだろう。(東京・HM)


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