コラム

2015/04/09

ある写真店主の思い(茨城・EM)

ある写真店主の思い


▼彼は写真店の社長。10年前に家業を継いだ。それまでは世界最大の複合企業の日本法人で金融業界に身を置き、起業を夢見てキャリアを積んだ。「企業を成長させるためには、産業の川上に立ち、価格決定権を握ること」。経営者らとの折衝でノウハウを学び、世界規模の視点で経済の動向を推察した


▼家業を継いだのは三十の時。決断の訳は明かさなかったが、「それまではフィルムを変えたことすらなかった」。しかし、勇断し社長に就いた彼は動いた。結婚式場を買収し、衣装部門も内製化。良質なブライダルサービスを安価で提供する形を構築した。街の一写真店は、いまやグループ10店舗、社員百余名までに成長した


▼買収ビジネスで業容を拡大する。優れた経営者であることは結果が示している。しかし、それだけではない。彼は「写真」に対する熱い思いを持っている。帰郷後すぐ、技術を学ぶため海外へ留学。「家も車も時が経てば価値は下がる。でも写真は違う。切り取られた一瞬は、時間が経過するほどに思いが増す」


▼年に一度、家族写真を撮影し、一つのアルバムに貼りためていく会員制サービス。海辺や公園など、顧客が望むロケーションでブライダル写真を撮影し冊子にする。街角の女性をモデルにしたフリーペーパー写真集の配布。いずれも彼の「写真の新たな文化つくりたい」「プロの撮影をより身近に感じてほしい」という思いから生まれた試みだ。「都心はもちろん、海外展開の準備も進めている」。夢は尽きない


▼常なれど、かけがえのない一瞬。今度の休日は、大切な人と街の写真館に出掛けてみてはいかがですか。(茨城・EM)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら