コラム

2015/05/29

心を込めたごあいさつ(群馬・SS)

心を込めたごあいさつ


▼「お世話になっております」。外部の人にあいさつする際の決まり文句になっている。毎日のように接する人や久しぶりに会う人、初対面の相手に対しても発している。これまでどんな場面においても使ってきたし、使われてきた。不自由なく使える形式的なお約束の言葉になっていた


▼ある電話に対応していて衝撃を受けた。初めて接する人に対し、いつものように「お世話になっております」と何の気なしに切り出した。だが、相手から返ってきた言葉は「あなたをお世話したことはありません」。想定していないことをはっきりとした滑舌で言われ、二の句が継げなかった


▼どうにか取り繕って受話器を置いた後「今まで、なんて適当なことを言ってきたのだろう」と思い知らされた。言われてみればその通り。相手は初めて接する人。当然、お世話になったことなどあるはずもない。心にもないことをこれまで言い続けてきたのだ。その相手からしたら、適当なことを言われていると失礼に感じられたのだろう


▼だが、人間の習慣というのは簡単には直らない。気を付けようとしても、なかなかそれに変わる言葉が見つからないし、気が付けば反射のように使ってしまっている。長年の習性が体に染みこんでしまっており、違う言葉を使おうとしてもぎこちない。返って失礼な対応になりかねない状態だ


▼特効薬が見つからない以上、今後は気持ちを込めようと心掛けたい。形式的な言葉にあぐらをかかず、相手と本当の意味でのごあいさつを交わし、心を通わせていきたいと思う。あのとき教えてくれた相手とまた接することを楽しみにしている。(群馬・SS)


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