コラム

2015/06/09

建設産業の生命線(茨城・HN)

建設産業の生命線


▼建設業の経営者は、よく公共事業の成果品をコップに例えてこう話す。「発注者はこのコップと同じ物を造ってくれと言うが、公共施設は量産されるコップとは全くの別物。一つ一つがオーダーメイドで、同じ物など何一つ無い。故にその出来映えは、評価され表彰に値する」


▼国が推奨する情報化施工が徐々に拡大している。ICT(情報通信技術)を活用した施工で生産性を高め、品質を確保する取り組みだ。測量機器を活用したTS(トータル・ステイション)による出来形管理が普及しており、最近では重機に応用したMC(マシンコントロール)ブルドーザ、MG(マシンガイダンス)ショベルなどが注目を浴びる


▼MCブルドーザを導入する地元企業に取材した。現場は法面部分の整備延長が湾曲しており、技量がないと難しい箇所。だが正確なデータが入力されたブルドーザは、前後左右の運転だけできれいな仕上がりを見せた。「通常のレンタルよりも割高だが、工期短縮や人件費などメリットがある」と話す


▼だだ、懸念材料もある。MCブルドーザは、機械が制御するため、素人でもアクセルを踏み込むだけで良い。取材した現場で若手の運転する姿が見えた。ベテランも、当初は心配して丁張りを行っていたが、いまでは邪魔になると言い、丁張りをしないことも多いという


▼生産性向上に一役買う情報化施工は、今後ますます普及が進むだろう。だが公共施設は、人の手によって創り出される唯一無二の存在。機械に頼り切ってしまっては、いざという時に柔軟な対応が取れなくなる。ベテランから若手への技術継承が、建設産業の生命線となる。(茨城・HN)


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