コラム

2015/07/07

一人の経営者の生き方(茨城・HN)

一人の経営者の生き方


▼昭和50年代、とある町に電気工事店を営む会社があった。社員は40人程度、売り上げは4億円と安定した経営を続けていた。その企業で社長である兄を支える弟がいた。弟は「兄を助けてやれよ」という父親の指示どおり、店舗の設計から施工までを手掛け、縁の下の力持ちとなった


▼ある時、その会社に悲劇が訪れた。兄である社長ががんに冒され、急ぎ、バトンを弟に託すことになった。一夜にして重責を担うことになった弟は、社員のことを思い、社長であるにも関わらず、誰よりも率先して仕事をこなした


▼つくば万博の開催などで仕事に恵まれ、その会社の売り上げは5倍の20億円まで伸びた。やがて訪れたバブル期には不動産に手を出さず、堅実に経営した。また3年先を見据え、立ち上げた設計コンサル会社が、バブル崩壊の時期に会社を助けた


▼ことし5月に茨城県電設業協会の会長となった大堀電気グループの大堀康之氏、その人だ。彼は仕切ることに長けた前会長とは、また違ったタイプかもしれない。だが先頭に立って寡黙に社員をまとめてきた力で、協会員を先導していくことだろう。「何をしたわけでもない。ただ運が良かっただけ」と謙遜する大堀氏。だが運だけで、ここまで来られるほど、世の中は甘くはない


▼兄を助けるために、ひたすら努力してきた技術力。その技術力を駆使し、社員を守るために第一線で踏ん張ってきたこと。バブル期の甘い罠にはまらなかったこと。そして先見の明を持って設計コンサルを立ち上げたこと―。時代の荒波にもまれてきた経営者の生き方に、難局を乗り切るヒントがいっぱい詰まっている。(茨城・HN)


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