コラム

2015/08/25

夏の日の思い出(茨城・HN)

夏の日の「思い出」


▼お盆を過ぎたとはいえ、暑い日が続く。この季節になると、子どものころのように長い夏休みを過ごしている錯覚におちいる時がある。「仕事に身が入っとらん」と叱られるかもしれないが、なんとなく浮き足だった気持ちになるのは、暑さのせいだろうか


▼子どものころ、毎年お盆の時期に待ちわびていたのが、田舎への墓参りに来る東京からの親戚ご一行様。山や川遊びで時間を過ごしていた田舎者にとって、きらびやかな場所から来る人たちの身なり、立ち振る舞い、すべてが新鮮だった。単純な言葉かもしれないが、「都会人がうらやましい」と感じる瞬間だった


▼そんな親戚ご一行の中で、ひときわ印象に残る存在が伯父だった。高そうな服や時計を身にまとい、高級車から降りてくるその姿は、都会から来た人を印象付けるのに十分だった


▼ある時、子どもながらに「どんな仕事をしているんだろう」と気になった。そして物心がついたころ、大手ゼネコンの重役であることを知った。マレーシアやインドネシアなど海外を股に掛けて活躍。海外の著名人と会食する写真、関わった代表的な建築物の写真やエピソード。いつしか、お金持ちの伯父さんから「尊敬する伯父さん」へと見方が変わった


▼「これからの日本人は海外に目を向けんといかん」。常に先を見通していた。幼少のころから努力家で、東京で成功を収めた祖母自慢の息子だった。だが日ごろの無理がたたってか、体調が悪化。入院後も会社の海外展開を案じていた。遠い夏の日の思い出。実家の仏壇に今も飾られる、栄光の日々を写した写真を眺めながら、伯父の無念に思いをはせる。(茨城・HN)


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