コラム

2015/10/22

二兎追う者の結末(茨城・HN)

二兎追う者の結末


▼ロサンゼルス一帯を襲った『大地震』は高層ビルや高速道路、ハリウッドダムをも決壊させ濁流が街に迫った。1974年制作のパニック映画だ。濁流で、冷えきった関係にある妻レミーが流されそうになる中、主人公グラスは、レミーと、気にかける未亡人マーシャルのどちらかを選ぶ決断に迫られる


▼大きな被害をもたらした関東・東北豪雨。発災前、気象庁のただならぬアナウンスに「いつもと違う」と感じた方も多かったのでは。新聞制作の現場でも、河川の水かさの増加、鬼怒川の堤防が決壊した情報が流れると、緊張が一気に高まり、現場の映像で事の重大さを痛感した


▼茨城から仙台へ向かう途中、3月に開通した常磐道・常磐富岡~浪江IC間から見た帰宅困難区域の景色は非日常的な光景だった。家があるのに人が居ない。辺り一面は人の背丈以上の雑草や、汚染土などを閉じこめた黒いフレコンバックで覆われている


▼いつ完成するか分からなかった高速道路が、瞬く間に開通し、円滑な交通を可能とした。災害を契機にインフラ整備が進むことを皮肉に思うが、それでも建設業が持つ力の大きさをあらためて痛感する。それは国民を災害から守ることができる力だ。その力を発揮するには潤沢な予算が不可欠である


▼大震災や関東・東北豪雨災の被災地では、今も懸命に復旧・復興へと尽力する建設業の姿がある。もし安保や五輪問題などで気がそれたのであれば、襟をただし国土強靭化計画の遂行に傾注いただきたい。二兎追う者は一兎も得ずである。ちなみに、グラスがどちらの女性を選んだか気になる方はDVDのご観賞を。(茨城・HN)


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