2015/12/05
空き家は泣いている(東京・KK)
空き家は泣いている
▼古民家を改修してレストランや喫茶店などに再生利用する事例が増えている。近所にある喫茶店は、築80年以上の古民家がリノベーションにより若者が集う人気店に変貌を遂げたということを最近知った。天井の太い梁はそのままむき出しで残っており、現代風の内装との対比が面白い
▼国土交通省は賃貸用や売却用を除いた空き家のうち、最寄り駅から1㎞圏内にあって簡易な手入れで活用可能な空き家が約48万戸あるとの推計を示した。ただ48万戸は全国に約820万戸ある空き家のごく一部。また2033年には空き家数が約2150万戸に上るという民間研究機関の推計もある
▼5月に施行された空き家対策特別措置法に基づき、周辺に悪影響を及ぼし、倒壊する危険性がある「特定空き家」は地元自治体による強制的な取り壊しが可能になった。第1号は神奈川県横須賀市で適用されたが、今後も増えることは間違いない
▼国交省は来年度の税制改正要望において空き家の発生を抑制するための特例措置創設を求めている。旧耐震基準で建築された居住用家屋を相続した場合に耐震リフォームや解体を促すため、所得税の税額控除制度を設けるもので、今後の行方が注目される
▼国交省の調査によると、空き家の発生理由は「相続して取得」した場合が最も多いという。新築の際には多くの夢が詰まっていたはずの家が、子や孫の代になると時代にそぐわず、解体もされずに放置されるのは悲しいことだ。現代の知恵で再生利用することにより、新築時には考えられなかった姿で家が生まれ変わるならば、建てたご先祖様も喜ぶのではないだろうか。(東京・KK)