コラム

2016/01/16

襷をつなぐ新年に(群馬・TF)

襷をつなぐ新年に


▼昨年、建築業界にマンション杭打ちデータ偽装事件の衝撃が走った。偽装事件と聞くと、2005年の耐震強度偽装事件を思い出す人も少なくないだろう。しかし、またもデータ偽装は繰り返され、建築基準法や管理体制の在り方が再び浮き彫りとなった。そして、はかなくもマイホームを手にした人の未来を奪い、建築業界の信頼を失墜させた、杭打ち業者の事件は、社会を揺るがす事態となった


▼事業規模が大きくなれば関わる企業や人は多くなる。それらをつなぐのは信頼という1本の襷だ。タスキといえば、新年にはニューイヤー駅伝(第60回全日本実業団対抗駅伝競走大会)や箱根駅伝(第92回東京箱根間往復大学駅伝競走)が行われた


▼タスキには、練習の汗や涙、出場できなかった選手の悔しさ、家族の支えなど様々な思いが詰まっている。それらをゴールまでつないでいくのが駅伝だ。わが家では毎年、こたつで駅伝を見るのが、お正月の過ごし方。なじみのある企業や出身校を応援する


▼とある給水ポイントでの出来事にふと涙がこぼれてしまった。出場できなかった選手が同級生にペットボトルを渡しアドバイスをする。苦楽を共にした仲間とほんの数十秒、並走する。最初で最後の箱根駅伝だった。そして、思いを受け取った走者は力強くゴールを目指す。今までの苦労などなかったかのような笑顔になって駆け抜ける


▼私は、ペンを取り、信頼という襷を文字に込め、キーボードをタイプする。階段で息が上がり、湯船では必要以上に湯があふれ、ジョギングすれば膝を痛める。まずは襷を掛けられる体にしなくてはいけない。(群馬・TF)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら