コラム

2016/02/23

静かなことは良いことか(茨城・TI)

静かなことは良いことか


▼最近のこと、都心から閑静な場所に移り住んだ。時折、騒がしい通行人の声や車両の音を懐かしく思うことがある


▼引っ越してすぐは、静か過ぎることに慣れなかった。以前住んでいたのは東急東横線の線路沿いで、扉を開ければ目の前を電車が通り過ぎていくような環境だった。始発から終電まで、車輪が線路に擦れる音を毎日聞いていた。そのことに慣れすぎたためか、今の住宅地は静かで、少し物足りなく感じてしまう


▼もちろん、静かなことは良いことである。騒音は苦情やトラブルのもとだ。工事現場や道路でも振動騒音規制が進んでいる。近年では自動車も静音化が進み、格段と静かになった。自動車騒音の研究でも、路面とタイヤが接することで発生するロードノイズが問題視されるようになった。これまであまり問題視されていなかったロードノイズが着目されるようになったのは、自動車が静かになったことの象徴といえよう


▼しかし、静か過ぎることが問題になることもある。電気自動車やハイブリッド車が低速で走行すると、非常に静かに走行できる。しかし、それでは車両の接近に気付くのが遅れるとして、一部の車両には擬似的な走行音を発生させる装置が取り付けられた。騒音を気にするあまり、静かになり過ぎた結果、安全のために少しうるさくする必要が出てきたのだ


▼電車や自動車、工事現場、工場など、騒音は一種の危険予知になる。また、そこに人がいることを教えてくれる。お互いに配慮することは当然だが、何でもうるさく思うだけでなく、心にゆとりを持ち、耳を傾けてみることも大切なのかもしれない。(茨城・TI)


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