コラム

2016/03/09

アナログで何が悪い(群馬・TF)

アナログで何が悪い


▼見返すことの少なくなったフォトアルバム。ページをめくるたびにどよめきが起こる。日付と場所の刻まれたメモ書きと写真。思い出は色あせることなく、昔の記憶を呼び覚ましてくれる。アルバムの質感や匂いはアナログでしか味わえない醍醐味だ


▼メールでのあいさつが増えた年賀状。年に一度の文通は、会う機会の少なくなった友人や恩師への近況報告。添えられた一言からは懐かしさを感じ、見慣れた文字は安心感を与えてくれる。年賀状が届く元旦は、メールでは味わえない楽しみがある


▼改札で切符を切る駅員さん。通勤や通学時の「行ってらっしゃい」の一言が、ささいないら立ちや少しの寂しさを忘れさせてくれる。切符を切る音が心地よく、リズミカルに構内に鳴り響く。自動改札機はいくら話しかけても虚しいだけである


▼そんな私は、時代の進歩に取り残される人間のひとりだ。ウエストのサイズが増えるたび、鏡の前で絶句する。数字は現実を突き付け、デジタル体重計の電源を思わず切る。アナログ体重計に乗って再計測。変わるはずがない。分かっているけどやめられない深酒と別腹スイーツの誘惑に負ける


▼デジタル化する世の中で、アナログな人間がいとおしいのは、便利とか効率といった言葉では片付けられない面倒なモノだからなのかもしれない。インターネットなどを通じて世界の人たちとより身近にコミュニケーションが取れるようになってデジタル化して便利になった。しかし、本当に身近な人たちとのコミュニケーションまでがデジタル化してしまったら不便なことも出てくるのではないだろうか。(群馬・TF)


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