コラム

2016/03/24

物に対する思い入れ(群馬・SS)

物に対する思い入れ


▼所有物にはそれぞれ愛着がある。旅先で買ったペナント、学生時代の参考書、友人からもらったキーホルダー…。それらに触れるたびにその時の情景が思い浮かぶ。初めての地ではしゃいだこと、机にかじり付いて勉学に励んだこと、もう何年も会っていない友人の笑顔。懐かしい思い出に浸れる貴重なひとときだ


▼思い入れがあるからこそ処分に困る。物を捨てることができない方だと自覚しているが、それらを置くスペースは有限だ。年を重ねるごとに物は増えていく。昨年末、実家を出る際の荷造りで、押し入れの奥から山のように発掘された。人が見ればがらくたに映るのだろうが、どれも大切なものだ


▼断捨離がテレビでもてはやされたころから、母親が「いい加減に片付けなさい!」と言うようになった。荷造りの時にもなれば「全部持っていくか、捨てなさい!」と言葉も強くなる。片付けの必要性は承知している。しかし、やはり思い入れの方が勝るのだ。なかなか決断ができず、それらは今も処分保留で実家に置かれている


▼引っ越し先では、できるだけ物を増やさず、簡素な生活を心掛けている。部屋にあるのは生活必需品のほか、実家から持ち出した少しの娯楽品だけ。引っ越しからそれほど物は増えていない。部屋は殺風景で物寂しい。何となく心に穴が空いてしまった感じだ


▼世の中にはいろいろな人がいる。片付けが得意で好きな人もいれば、その逆もまたしかり。このまま心に穴が空いた状態に慣れるまで過ごすか、物に囲まれた以前の生活を取り戻すか。これから思案の日々を送ることになりそうだ。(群馬・SS)


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