コラム

2016/04/09

コンピューター対人間(群馬・MY)

コンピューター対人間


▼プロ将棋棋士というと、冷静沈着で感情の起伏を面に出さないという印象が一般的だろう。そんな棋士が対局後に涙を見せたことがある。豪快な攻めで知られるベテランの塚田泰明(つかだ やすあき)九段だ


▼2013年の将棋電王戦は、プロ棋士5人と将棋のコンピューターソフト5つが戦う団体戦で行われた。プロ側が1勝2敗で迎えて後がない4戦目が、塚田九段とソフトのプエラαの一局だった。塚田九段は厳しい局面からなんとか自分の王将を敵陣に逃げ込ませ、引き分けに持ち込んだ。その対局直後に記者から感想を問われたとき、思わずこぼれ出た涙だった


▼最新の将棋ソフトは、1秒間に数千万から数億手以上を読むと言われる。その基礎となるのは、人間と人間の将棋の歴史である棋譜だ。製作者は、プロ棋士たちが残した何万局もの棋譜を覚え込ませ、ソフトは局面ごとに膨大な棋譜の中から最有力手を検索し指す。高機能のパソコンを使えば計算スピードも上がり、さらに強くなるという


▼もはやプロ棋士よりもコンピューターソフトの方が強いのかもしれない。しかし、ファンにとって、将棋の魅力やプロ棋士同士の対局の価値は変わらない。プロ棋士たちは、全員が狭き門を通過した精鋭だ。そんな彼らが熟考し、絞り出すように一手を指す人間らしい姿が人々の心を捉えている


▼英オックスフォード大学の研究では、コンピューターの技術革新により、20年後に総雇用者の約47%が職を失うらしい。人工知能やロボットが目まぐるしく発達する現代。それでも人間らしさのある仕事は、人に求められ、残り続けていくだろう。(群馬・MY)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら