コラム

2016/04/16

人ごとではないカエル社会(茨城・KS)

人ごとではないカエル社会


▼そこかしこで生命の息吹が感じられる季節がやってきた。古くから春の景物とされてきた『カエル』。金運や安全祈願の縁起物としての信仰もあつい。弊社水戸支局では、茨城県建設業協会から頂いた鮮やかな朱と緑のペアのカエルがカウンターに鎮座し、毎日出迎えてくれている


▼『永遠の0』でおなじみの作家、百田尚樹氏の最新作『カエルの楽園』(新潮社)が人気だ。舞台は自然豊かな美しい国「ナパージュ」。そこはツチガエルたちが「三戒」と呼ばれるおきてを守り、かつての敵であるワシに守られた不思議な国。しかしあるとき、隣の沼地からやってきたウシガエルの侵略に遭う。三戒のもと話し合いで解決を試みるナパージュの運命やいかに…


▼『カエルの楽園』では憲法第9条、安全保障、偏向報道、少子高齢化など、現在の日本社会を巧みに風刺している。それでいて難解とは一切無縁で、「アリとキリギリス」や「ウサギとカメ」のイソップ物語のような童話の体裁でとても親しみやすい


▼何より見事なのが文章の読みやすさ。文章を書くとなると、往々にして普段使わないような言葉を使って知識を誇示しがちになるが、この本からはそれが感じられない。読書家から本とは無縁の人まで、とにかく老若男女に読んでもらうための戦略だ。〝読みやすく分かりやすい文章〟が永遠のテーマである記者にとっても、学ぶところが大変多かった


▼ナパージュのありさまは決して人ごとではない。本当の平和とは何か。この本をきっかけに、一人でも多くの人が井戸の中から飛び出すことを願ってやまない。(茨城・KS)


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