コラム

2016/06/07

信頼を取り戻すために(茨城・KN)

信頼を取り戻すために


▼広島東洋カープの新井貴浩選手が二千本安打を達成した。一人のファンとして心から嬉しく思うと同時に、彼がカープで大勢のファンに祝福されているという事実が奇跡のように思えた


▼入団当初、彼の評価は決して高いものではなかった。ミスも多く、ファンからの野次を人一倍浴びた。それでも努力の末にレギュラーの座を手に入れ、ホームラン王にも輝いた。泥臭いながらも懸命にプレーする彼の姿勢を多くのファンが認め愛した


▼しかし2008年、フリーエージェント権を使い他球団に移籍するとファンは猛烈に批判。移籍後初の広島市民球場の試合で浴びせかけられたブーイングは凄まじいものだった。愛していたからこそ裏切られたと感じたのだろう


▼出戻りが許されにくいプロ野球界だが、新井選手は昨年古巣に戻ってきた。復帰が発表された当初は歓迎しないファンも少なからずいたが、彼は逆風の中で逃げずに懸命にプレーし、チームのために尽くすことで少しずつ信頼を勝ち取っていった。夏を過ぎたころには批判の声は小さくなり、二千本安打達成が間近となった今シーズンはどの選手よりも大きな歓声を浴びていた


▼信頼を失うのは簡単だが得るのは難しい。さらに難しいのは失った信頼をもう一度取り戻すことだろう。ささいなミスや油断で信頼を失ったとき、逃げてしまうのは簡単だ。しかしそれでは永遠に信頼されることはない。逆風の中でも懸命に、誠実に努力を続ければ、いつかは信頼を取り戻せるということを新井選手に教えてもらった気がする。彼が1日でも長く、幸せな現役生活を送ることを願ってやまない。(茨城・KN)


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