コラム

2016/06/25

美しき昆虫と土木施設(長野・JI)

美しき昆虫と土木施設


▼6歳の娘は昆虫が大好きで、家では図鑑ばかり見ている。その娘を東京都立多摩動物公園の昆虫園に連れていった。本館では世界中の昆虫の標本が展示され、別館の生態園ではさまざまな蝶が広場を舞う。珍しい昆虫の姿に、来園者の誰もが興奮していた


▼娘の影響を受け、自分の昆虫好きが幼少時から戻りつつある。休日には大型書店で昆虫の図鑑や写真集を眺めることも多くなった。怒ったカマキリの鋭く近寄りがたい姿、宝石のような色とりどりの甲虫たち、迫力あるアゴを持つアリ。いずれも美しい。昆虫の造形は機能美であり、無駄がない


▼土木施設を公共性や利便性で捉えることも大事。その土木施設を長野県は「宝」と捉え、資料集『信州土木のお宝』を作成した。橋梁やダム、トンネルなど70施設の所在地図や建設年、見どころ、見学時期、周辺観光地などの情報をまとめている


▼中を見ると、施設の美しさをカラー写真で味わうことができる。橋梁の伸びやかさやダムの迫力、山に描かれた曲線の峠道など、昆虫に対抗するわけではないが、やはり機能美を感じる。土木のイメージを変える力を『お宝』は持っているといえる


▼標本を見ていた娘が突然に「そうだ」と声を上げ、床に座り込んだ。自由帳を広げて何やらメモ書きをしている。研究熱心な娘だけに、見学で気付いたことや大事な情報を記録しているのだろう。後ろからのぞき込むと、大きな枠を描き、その中に大きな文字で『これはすごいです』と一言だけ書いていた。どうやら標本に大きな衝撃を受けたようだ。それだけでも行った価値はあっただろう。(長野・JI)


厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら