コラム

2016/07/01

歴史の上にある笑顔(群馬・TF)

歴史の上にある笑顔


▼公園へ散歩に行った。新緑と川の音に身も心も癒される。芝生では子どもたちが走り回り、木陰のベンチではお年寄りがおしゃべりをしている。日曜日の昼下がり、平和で幸せな風景にこちらも和やかな気持ちになる


▼歩いていると一画で異様な雰囲気を感じた。園路から少し奥まった場所に碑があった。「我が国ダイナマイト発祥の地-陸軍岩鼻火薬製造所跡」と刻まれている。調べてみると、この公園にはかつて陸軍の火薬製造所があり、ダイナマイトを日本国内で初めて生産した場所だった。この碑は当時の従業員や遺族などの関係者によって建立されたことが分かった


▼1974年に明治100年記念事業で開園したこの公園は、平和維持への願いが詰まっている。富国強兵政策によって日清戦争や日露戦争を進め、昭和の悲劇を繰り返さないために整備されたと言っても過言ではない。しかし公園内にはまだ立ち入り禁止エリアが存在する。黒い柵で覆われ、爆風を避けるための防空壕や工房、トンネルなど当時の施設が廃墟となって残っている


▼なぜ廃虚のまま残しているのか不思議だ。園内には県立歴史博物館もある。過去にここで、何のために何が行われたのかということを後世に伝えることはできないのだろうか。世代が変われば歴史を語れる人は少なくなる。先人たちの功績や失敗を学ばなければ、いつの日か同じことを繰り返してしまう


▼本年度も公園では園路の整備やあずまやの補修などが行われる。歴史を経て開園したこの公園を維持し、平和の大切さを再確認しながら、たくさんの笑顔が生まれることを願う。(群馬・TF)


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